2月の経営方針共有勉強会
《 陰徳 》という言葉を読んだりするのは久々の事でした。
伊集院静の「琥珀の夢」サントリーの創業者 鳥井信治郎の物語に時々出てきます。恵まれた家に生まれ、母より教えてもらった《陰徳》などの教えを身につけ、他家に丁稚に出てから地道に精進し、世界屈指のウイスキーの醸造元となり、その精神が子孫に脈々と受け継がれていく。歴史小説だが、その背景をきっちり描いていた本でした。
《積善の家には必ず余慶あり》をという中国の古典が思い浮かびました。
・・・・社員の皆さんに紹介して今月の経営方針共有勉強会のスタート
《 心のありよう 》
2018年02月01日
有賀 泰治
1、限界をつくるも破るのも自分自身。勇気を奮い起こし弱気な心に「革命」を起こしたい。
平昌五輪の開催まで半月あまり。メダルの期待が高まる種目の一つが、女子スピードスケートの「チームパシュート(団体追い抜き)」だ。昨年のW杯で3連勝。そのたびに世界記録を更新する。
チーターのような、しなやかな走り・・・そう評されるのがチームの柱・高木美帆選手。一昨年3月、彼女を変える出来事があった。五輪3大会連続金メダルの «絶対女王»イレイン・ブスト選手(オランダ)のレースを見た時の事。高木選手が思わず本音を漏らした・「あんな選手に勝てるわけがない」
それを聞いたオランダ人の日本代表コーチが問いかけた。「ブストも同じ人間。なぜ自分にもできると思わないの?」はっとした。«できない»と決めつけてしまった自分の弱さに気づいた。以来、どうしたら勝てるかを考え抜き、自分にできることを一つ一つ積み重ねてきた。
高い目標や壁に直面した時、闘志を燃やして立ち向かうのか、諦め半分で立ち尽くすのか。この一念の違いで、結果は大きく変わってくる。«自分には無理»と決めつけてしまえば、その瞬間に力は出なくなるからだ。
2、人に尽くし、人に感謝できる生き方は美しい
中国に「飲水思源(いんすいしげん)」という言葉がある。水を飲む時に井戸を掘った人に思いを馳せる、人から受けた恩は忘れてはいけない、などの意味である。
静岡県在住の中国人画家・王伝峰さんが2015年9月に挿花芸術の作品集『余香(よこう)』を、講談社から出版した。日本の著名な写真家と建築家の全面協力で実現した。“ 中国友誼(ゆうぎ)の芸術書 ” である。
23年前から富士山の麓で暮らす王さん。中日国両国の文化を吸収して「今の自分」があると胸を張る。独自の風格を持つ作品は、2002年の日中国交正常化30周年記念切手、2008年の日中平和友好条約締結30周年切手にも採用された。
作品集の出版祝賀会で、王さんは新聞配達のアルバイトをしながら生活した来日当初の日々などを赤裸々に語った。続けて「お世話になった方々のご恩は一生、忘れないでしょう」と。会場には、各界の来賓とともに、当時を知る人たちも招かれ、目頭を抑える人も・・・
「人に花を贈り、手に余香留まる」
中国の言葉を、王さんは出版祝賀会の参加者に贈った。作品集のタイトルに込められた思いが伝わってきた。生き方の美しさが国境を超えていく。
3、届け真心
2月になった、もうすぐ春と思うと待ち遠しい。昔から「4月の風は光、5月の風は薫る」という。確かに日の光が熱を持つにつれ、匂いもまた増していくような気がする。
実際、樹木の成長が活発になる時期には、「フィトンチッド」と呼ばれる芳香を持った物質が、葉から多く放出されるという。これこそ香りの元。森や林でなくても、近所の公園などの樹木の多い所なら、吹き抜ける風が運ぶ新緑の香りを楽しめるはずだ。
風は見えない。だがその存在を、香りや肌で感じることはできる。英国のクリスティーナ・ロッセティは歌った。
「誰が風を見たでせう?/僕もあなたも見やしない、/けれど木の葉をふるはせて/風は通り抜けてゆく」(西條八十訳)
心もまた、見えない。見えないが、言の葉のやり取りを通じて、その温かさ知る。
自らの人格の薫りをもって相手を包み、感化していくこともできる。
4、決意一つで、若者はいくらでも伸びていく。
「音楽は時代を映す鏡」といわれる。では、変化が激しい現代でヒット曲を生む秘訣は何か。若者に人気の楽曲を手がける音楽家が答えた。
情報通信技術などの発達で、音楽を “ 聴く方法 ” “ 受け取る方法 ” は多様になった。だが、曲作りの本質は変わらない。重要なのは人々の “ 歌いたい ” という気持ちを引き出すこと。 “ 聴く ” だけでは受け身にすぎない。
童謡と同じように、歌は「歌い継がれることで広まっていく」という。(柴 那典 『ヒットの崩壊』)
歌う時、人は自分の感情を託したり、人生の経験を重ねたりするもの。だから同じ歌でも、人ごとに深みや味わいは異なる。歌という行為によって、その人は代わりのいない “ 主役 ” となり、自身を表現するのだ。
「聴く側」「見る側」だった若者がいつか「歌う側」「発信する側」になって躍動する時がくる。人生のステージに立った一人一人もまた、紛れもなく “ 主役 ” だ。
「自らの使命を自覚した時、才能の芽は急速に伸びる」
未来を担う若者の成長をこい願う。
5、一人一人が主体者の自覚に立った時、「まさかが現実」になる。この “ 原理 ” は今も未来も変わらない。
重版が続く歴史小説『家康、江戸を建てる』(門井慶喜著)は読み応えがあった。徳川家康が関八州へ移封されたころは、未開も同然だった江戸。その街づくりを手掛けた職人たちが主人公だ。
東京湾に東京湾に注ぐ利根川を太平洋に注ぐように東遷させ、耕作地、居住地を広げた改修事業。貨幣を全国的に統一するための小判製造。武蔵野の原野から飲み水を引き込む水路工事。江戸城の石垣に使う巨石を、伊豆山の崖から取る、命がけの作業もあった。それぞれ分野は異なるが、誰もが天下の大仕事を支える “ 主体者 ” の気概に溢れていた。同書は小説だが、事実、そうした心意気があればこそ、今日の東京に続く、江戸の礎が築かれたに違いない。
ピラミッド建設にまつわる発見を思い出す。古代の大建築家は、歴史家ヘロドトスが唱えた、奴隷による建造ではなく、普通の市民たちが、大事業に加わる誇りに満ちて建築したものだった。
6、“ 善き友 ” を得たいなら、相手にとって、“ 善き友 ” となれるよう、まず自分を磨くことだ。
どうしたら “ 親友 ” を見つけられますか?・・・
ある学生からの質問に、漫画家の赤塚不二夫さんが答えた。「まずはっきり人生の目標を決めることだ」
どんな目標でもいい。達成に向けて真剣に挑戦する中で、自分と同じ志を持つ人に自然に出会う。その仲間こそが、かけがいのない存在になると、赤塚さんは熱く述べた。(『人生これでいいのだ!!』)
赤塚不二夫さんは巨匠・手塚治虫氏を慕い、多くの “ 漫画家の卵 ” が集まったアパート「トキワ荘」に住んでいた。切磋琢磨したのは、石ノ森章太郎氏、藤子不二雄氏ら。トキワ荘を巣立った後も彼らの友情は変わることなく、互いに触発し合いながら、数々の名作を世に送り出していった。
支え合い、共に成長する友の存在が、どれほど大切か。一人の友との出会いで、人生が大きく変わることもある。
人の道「決意した人」が善人・善友であって、善友を持つことが人生修行の全てである。
7、子は宝、鳳雛(ほうすう)たちが大空へ羽ばたくための安心の世界がある。
ヒヨドリの巣に卵が産み付けられていた。見つけたのは8月のまだ暑い日が続いている、その夏の日差しを避けながら、親鳥はじっと卵を温め続けた。無事に産まれたものの、つかの間、今度は激しい夕立が。すると親鳥は羽を大きく広げた。ひなは水に濡れると体温が奪われ、命を落とすことも。親鳥はひなを守る “ 屋根 ” をつくったのである。その後、晴れて巣立ちの時を迎えた。
「育(はぐく)む」の語源は「羽くくむ」という。「くくむ」は「包む」の古語。親鳥が羽でひなを包む姿に由来する。
万葉集にも「旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 我が子育ぐくめ 天(あめ)の鶴群(たづむら)」とある。
海を渡った息子が寒さで凍えぬよう、母の私に変わり、その翼で温めておくれと鶴に願った歌だ。
「子供の健やかな成長には、“ 何があっても自分を受け入れてくれる人がいる ” という絶対的な安心感が必要」と。炎暑に焼かれ、風雨に打たれても、屋根となって子を育む。それを無償の愛というのだろう。
8、通り一遍の話だけでは人は動かない。心を砕いた一人への思いやり。
「確かに “ こころ ” はだれにも見えない/けれど “ こころづかい” は見えるのだ」「同じように胸の中の “ 思い ” は見えない/けれど “ 思いやり ” はだれにも見える」。詩人・宮澤章二さんの詩の一節である(『行為の意味』ごま書房新社)
「こころ」を「つかう」。「思い」を「やる」・・・つまり。心や思いやりは、具体的な行為に表してこそ、相手に伝わるものだろう。
近代看護の礎を築いたナイチンゲール。教える子が、不規則で激務の仕事に就いていることを熟知する彼女は、手紙を送る際、いつもこう書き添えたという。“ 私が何かの役に立てるなら、遠慮せずに言ってください”。その心遣いに、弟子たちは困難に立ち向かう勇気を持ったに違いない。
上に立つもの、細やかで具体的な励ましをできるようにしていきたいものだ。一人一人の性格や家庭、しごとの環境を熟知し、家庭でも配偶者、子供や親族へも気配りができればと思う。
9、真心の対話。その日々の中に人生の充実があり、自他共の幸福への道がある。
人生を豊かにするものとは・・・ハーバード・メディカル・スクールの研究者が1938年から75年にわたり、724人の追跡研究を行った。
分かったのは、“ 人生をもっと豊かにする ” のは「人間関係」ということだった。身近な人と良い関係にある人、いざという時に頼れる人がいるほど、人生の満足度が高かった。
健康社会学者の河合薫氏は、先の研究結果を踏まえ、“ 幸せは人それぞれ ” との風潮はあるものの、やはり、日常の中に幸せは存在すると指摘した。(『他人をバカにしたがる男たち』日経プレミアシリーズ)
近くに、何でも相談してできる友がいる。当たり前のことではないけれど、本当は幸せなことだと思う。仕事で行き詰まっている時や、悩みがある時など、時々あう中で、“ 不満 ” をぶちまけることもある。友人は「一緒に考えよう」と。そして、じっくり話を聞いてくれた。気持ちが落ち着くにつれ、 “ 愚痴ばかりの自分 ” に気付く。
そんな友が多くいるほど仕事に臨む姿勢は変わり、苦境を乗り越え、人生も変わっていく。
10、最上の文化
今の文明で最も大事だと思われる事柄について、一番交換したい相手と書簡を交わしてほしい・・・・・
アインシュタインは1932年、国際連盟から依頼を快諾した。選んだテーマは「戦争」。相手は心理学者のフロイトだった。
アインシュタインは、戦争の根本的原因が「人間のこころ」にあると考えていた。
フロイトにとうた。
「人間の心を特定な方向に導き、憎悪と破壊という心の病に侵されないようにすることはできないのか」(『ひとはなぜ戦争をするのか』浅見昇吾訳)
フロイトは、人間から攻撃的性質を取り除くことはできないとしつつ、それでも、「文化」の力によって、人間の心を平和の方向へ変化させ、戦争の終焉(しゅうえん)へ歩みだすことは可能だ、とつづっている。
「文化」を表す英語「カルチャー」の語源は「耕す」という意味である。戦争が、暴力で人間を「外から」支配する力とすれば、文化は人間の心という「内から」平和を築く力。その本質的な意義は、人類の目指すところだ。
精神の変革なくして「安国」はない。
11、真剣
東京 日野市佐藤彦五郎新選組資料館に、土方歳三の愛刃「康(やすし)継(つぐ)」が所蔵されている。その美しい刃紋は多くのファンを魅了する。
司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』にこんな場面がある。新選組のいく末を案じて、「この先、どうなるのでしょう」と尋ねる沖田総司に土方歳三が、からからと笑って答える「どうなる、とは漢(おとこ)の思案ではない」「おとこは、どうする、ということ以外に思案はないぞ」
人生の転換期にあって、未来は「どうなるか」と思いあぐね、試練の激流に翻弄されるか。それとも厳しい現実を直視しつつ、未来を「こうする」と目標を定め、自分の人生という劇の主役は自分しかいないと腹を決めて、真正面から立ち向かうしかない。
人の意思をくじき、生命の無限の可能性を否定しようとする魔性の働きを「元品の無明」と説く教えもある
「元品の無明を対治する利剣は信の一字なり」。
「信」とは「必ず勝つ」との強い一念ともいえる。その鋭さに磨きをかける作業が、日々の精進だ。
12、今月の言葉
マイナスとプラス
マイナスは自分の心掛け次第で必ずプラスになる
・・・・・戸澤宗充(日蓮宗一華庵・サンガ天城庵主)
慈愛のまなざし
慈愛のまなざしでまわりの人を見つめる心を持ちたい。 観音さまのように
・・・・・横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
シンプルに
一所懸命、悔いのない瞬間、瞬間を生きていく。 くよくよしていても始まらないから、シンプルに物事を考える
・・・・・髙田明(ジャパネットたかた創業者)
心願
われわれ人間は「生」をこの世に受けた以上、 それぞれ、分に応じて一つの心願を持ち、 最後のひと呼吸まで、それを貫きたいものです
・・・・・森信三(哲学者/教育者)
人生を変える力
お世話になった人たちや亡くなった 両親への感謝の気持ちが人生を変えていく力を持っている
・・・・・八木功(ニーハオ食品会長)
変革期の三つ資質
- ポジティブであること 二、夢や目標、志を明確に持つこと 三、自責
- ・・・・・落合寛司(西武信用金庫理事長)
忍の心
互いに忍の心があれば、何事にも和が生まれる
・・・・・川上仁一(甲賀伴党21代宗師家)
ガッツ
No Guts, No Glory(ガッツがない人間に繁栄はない)
・・・・・山田清志(東海大学学長)
ポジティブに明るく
私はだんだん年がいくに従って、 ますますポジティブに明るく感謝して、 という生き方になってきました。 一切ネガティブなことは考えまい、と。 それはネガティブなこころが ネガティブなものを呼び込むと考えるからなんです
・・・・・稲盛和夫(京セラ名誉会長)
Qちゃんに学ぶ「福」を呼び寄せる秘訣
嫉妬しているうちは本当の福は回ってこない
・・・・・小出義雄(女子マラソン指導者)
よき運命を創る
運命というのはこころによって変えられる。 そのこころが信念にまで高まったものであれば、 それによって運命は変えられる
・・・・・稲盛和夫(京セラ名誉会長)
充実
一瞬一瞬、一日一日を大切にして、充実させていきましょう。 せっかくこの世に生まれてきたのだから
・・・・・井垣利英(人材教育家)
最高の精神の自由
最高の精神の自由とは、 自ら気づき、自分で自分を変えていくこと
・・・・・上甲晃(志ネットワーク「青年塾」代表)
親切な心
人世に取つて親切が最大の美徳
・・・・・渋沢栄一(日本の資本主義の父
心の鍛錬
人生の大きな問題に直面して、自分の心の弱さを感じた時は、 その時の気持ちと強かった時の気持ちを比較、検討するんだ
・・・・・中村天風(天風会創始者)