5月の経営方針共有勉強会
《計画的偶発生》 友人から送られてきたメルマガに載せられていた言葉⁉︎
東北大学や横浜国立大学で教鞭をとる氏からの言葉は時々新鮮な響きを持っている。
“計画的偶発生” って何? ネットで調べ著書も購入して、早々に読破!
面白い!
会社の皆んなにも知ってもらおうと、まとめてみました。
経営方針共通勉強会5月
《計画的偶発性》
2019年5月1日
有賀泰治
1、プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance・計画的偶発性)とは?
・ 「計画された偶発性」理論のこと。
・ スタンフォード大学のジョン・D.・クランボルツ教授が提唱したキャリア論である。
・ キャリアは偶然の出来事、予期せぬ出来事に対し、最善を尽くし対応することを積み重ねることで形成されるというもの
明確なキャリアプランは必ずしも必要なく、偶然の出来事や出会いを味方に付けるようなポジティブ・シンキングによって、キャリアアップを図ることができるという斬新な理論です。
1999年にスタンフォード大学の教育学・心理学教授であるクランボルツ教授によって提唱された、キャリア形成に関するキャリア理論です。
キャリア論の中では、自分の適性等を見つけ、キャリアゴールを目指してキャリアを積んでいく「キャリアアンカー理論」と、偶然発生したことに対応し、その経験の積み重ねで形成される「プランドハプンスタンス理論」が対峙して論じられることがある。
どちらの理論が正しいということはない為、必要性や状況に応じて2つの理論を使い分け、行動や意思決定をすることが重要である。
「プランドハプンスタンス理論」を日本語では「計画的偶発性理論」「計画された偶然」などと訳されます。成功を収めたビジネスパーソンを対象にキャリア分析を行った結果、実に8割の対象者が「現在の自分のキャリアは予期せぬ偶然に因るところが大きい」と答えたそうで、これらの研究データに基づいて構築されました。
端的に言うと、キャリアは偶然によって左右されることが多く、これらの偶然をポジティブな方向に考えることでキャリアアップにつなげることができる、という理論となります。
2、プランド・ハップンスタンスの理論的骨子
プランド・ハップンスタンス理論は、3つの骨子をポイントとして構成されています。
1 )、個人のキャリアは、その8割が「予期しない偶然の出来事」によって形成される。
2 )、その偶然の出来事は、本人の主体性や努力によって最大限に活用することで、キャリアを歩む力に発展させることができる
3 )、偶然の出来事は、ただ待つのではなく意図的にそれらを生み出すよう、積極的に行動したり、自分の周りに起きていることに心を研ぎ澄ませたりすることで、自らのキャリアを創造する機会を増やすことができる。
エンジニアの例を挙げて説明しましょう。これまで学んできた技術が使えないプロジェクトに参加することになり、必要に迫られて新しい技術を覚えたというエンジニアは意外に多くいます。ところが、これがきっかけとなり、予想していなかった方向にキャリア転換でき、成功したといった例も多く存在します。
めまぐるしく変化する時代において、当初計画していたキャリアステップとは異なる方向に進んだというケースは珍しくありません。これを意図的にキャリア形成に活かしていこうとするのが、プランド・ハップンスタンス理論の考え方です。
3、プランド・ハップンスタンスの歴史的背景
このような考え方が注目を集めたのには、当時のアメリカの労働環境が大きく影響しています。クランボルツ教授が一般的な社会人を対象に行った調査では、18歳の時になりたいと考えていた職業に実際に就いている人の割合はたったの2%でした。これは、当時のアメリカで主流だった、「キャリアとは自分自身で計画し、それに合わせて意図的に職歴を積み上げて形成するものである」というキャリア論の限界を意味しています。ゴールを決めてそこに至るアプローチを逆算して積み上げていくことが必ずしも有効とは限らない、という現実が浮き彫りとなったのです。
変化の激しい現代においては、予期していなかった事態に対応しなければならない状況が多く発生します。自分の描いた計画通りに進まないことも多いでしょう。そうした中、変化への対応を前提とするプランド・ハップンスタンス理論が注目を集めるようになっているのです。
4、キャリア・アンカー理論の限界とプランド・ハップンスタンスの可能性
1)、キャリア・アンカー理論とは
キャリア形成における考え方としてよく知られているのが、キャリア・アンカー理論です。1978年に米国のエドガー・H・シャイン博士が提唱したもので、キャリアを選択する際の意思決定における概念を示しています。
2)、キャリア・アンカー理論では、どうしても譲れない価値観や欲求を船のアンカー(いかり)に例え、生涯にわたってキャリア選択に大きな影響を与えるものとしています。以下の八つに分類されています。
* 経営管理コンピタンス:経営にコミットし、責任ある立場になりたい
* 専門コンピタンス:自分の専門分野を極めたい
* 自律:安定した環境で落ち着いてじっくり取り組みたい
* 創造性:新しいものを産み出したい、創造性を発揮したい
* 安定:マイペースでいたい、自分のペースを乱されたくない
* 社会への貢献:自分の仕事を通して社会に貢献したい
* チャレンジ:自分の限界を超えたい、新しいことをどんどん試したい
* 全体性と調和:ワーク・ライフ・バランスの取れた状態にしたい
これらの価値観・欲求は職種や環境にかかわらず、キャリアを選択するときの指針となるものです。自身の「核」となる価値観や欲求を知り、キャリアプランに生かそうというのがキャリア・アンカーの考え方です。また、企業にとっても社員のキャリア・アンカーを知ることで、より効果的な適材適所の配置が可能になります。
3)、キャリア・アンカー理論の限界
自分自身の核となる価値観や欲求に沿ってキャリアプランを描くキャリア・アンカーという考え方には、適性を活かせるというメリットがあります。しかし一方で、変化への対応力が求められるビジネス環境においては、自身の価値観を軸においたキャリアプランが非現実的なものになる状況に多く遭遇します。
例えば、社内の組織改革が行われ、これまでとは違った仕事や望んでいないポジションに就かなくてはならないケースもあるでしょう。このときに自分の欲求には合わないからと避けてしまうと、可能性を狭めてしまう可能性があります。

このように、状況によってはキャリア・アンカー理論がマイナスに働くことがあります。また、価値観や欲求に固執しすぎてしまうと、行動や考えが硬直化してしまうことも懸念されます。これを補うものとしてプランド・ハップンスタンスへの期待が高まっていると考えられます。
5、偶然をキャリア形成に活かすために必要な5つのスキル
不確実性の高いビジネス環境においてキャリアを形成するには、どのような行動が求められるのでしょうか。プランド・ハップンスタンスでは、偶発性を受け入れると同時に、自ら偶然の出来事を引き寄せるアプローチが重要としています。
このような「予期しない偶然の出来事」をキャリアアップにつなげるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。プランド・ハップンスタンスを効果的に実践するために欠かせない5つのスキルをご紹介します。
1)、好奇心 (Curiosity):新しい学習機会を模索すること
自分の専門分野に閉じこもってはいけません。そもそも関心のあることや目標に関わることだけでなく、自分の知らない分野にも積極的に視野を広げて好奇心を持って臨むことが大切となります。新しい学習の機会を常に模索し続けましょう。
2)、持続性 (Persistence):失敗に屈せず努力をすること
うまくいかなかったり失敗したりしても簡単に投げ出すようなことはせずに、努力し続けましょう。自分の価値観や信念についてはこだわりを持ち、あきらめないことが重要です。足元を固めながら、粘り強く取り組みましょう。
3)、柔軟性 (Flexibility):信念、概念、態度、行動を変えること
必要のないこだわりは捨てて、環境の変化にフレキシブルに対応できるように準備しておきましょう。理想や現状にとらわれすぎると、想定外のチャンスを逃してしまうことにもつながります。「なんでも来い」という気持ちを持ち続けましょう。
4)、楽観性(Optimism):新しい機会が「必ず実現する」「可能となる」と捉えること
思い通りにいかないことでも悲観的に受け止めるのではなく、自分の知らない世界に飛び込むチャンスだととらえるようにしましょう。どのようなことでもポジティブに解釈することができれば、すべては自身のキャリアにプラスにすることができます。
5)、冒険心(Risk-taking):結果が不確実でも行動を起こす
結果がどうなるか見えない不確実な場合でも、リスクを恐れず冒険心を持って行動に起こしましょう。もちろん、最初から大きなリスクを取る必要はありません。手ごたえに応じて足場を固めた上で、大きく踏み出せば良いのです。
6、偶然を味方につける3つのスタンス

最後に、このような5つのキーワードを常に意識して行動できるような心の持ち方について詳しくご紹介します。これらのスタンスはキャリア形成に役立つのはもちろん、就職活動を行う上でも精神的な手助けとなってくれる可能性があります。
1)、方向性だけ定めて、将来の職業(仕事・職種)は決めない
キャリアだけに限らず、人生はあらかじめ計画した通りや期待した通りにはなかなか進みません。早いうちから「やりたいこと」を厳密に決めてしまうと、その他の選択肢を捨ててしまうことにもなり、かえって人生の幅を狭め、キャリアを失敗に導いてしまうことも考えられます。実際に「やりたいこと」ができる仕事に就いても、思っていたものとは違ったり、自分には向いてなかったりする場合も多いからです。
漠然と「こういう仕事がしたい」「こんな役に立ちたい」という方向性を定めるだけで十分であり、当面の希望や計画は持っても、それに固執しすぎないことが重要です。
2)、常に開かれた心(オープンマインド)を持ち続ける
「自分はこれ」と決めつけるような硬直的・閉鎖的な考え方はせずに、目の前にあることはとりあえずやってみよう、というオープンな心を持ち続けることも重要です。良い意味で優柔不断になり、様々なことにチャレンジしているうちに、自分が本当にやりたいことや進むべき方向性、目指すべき将来像が出来上がってきます。
社会人となって仕事に就くと、否が応でも「やりたいこととできることは違う」「好きなことと得意なことは違う」という経験をするものです。その時に、開き直ることができるかどうかが、以降のキャリア形成において重要なポイントとなるのです。
3)、「出来事」や「出会い」を大切にする
このように、自身の目指すおおまかな方向性を決めてオープンマインドの姿勢を保ち続けることができれば、自然と「出来事」や「出会い」に遭遇します。そのような出来事や出会いに対して常にアンテナを張っていれば、キャリアに転換できる機会を逃すことはありません。
これまでの経験の中でも、考え方を大きく左右するような出来事に遭遇したことや、まったく興味や関心のない人の言葉に大きく影響を受けたことがあるはずです。偶然の「出来事」や「出会い」を大切にするスタンスが、それらをキャリアアップにつなげる必然へと変えてくれるのです。
7、想定外の出来事をつくりだす方法を考える。
行動を起こすことによって、実りある想定外の出来事をつくりだす方法を紹介
1)行動を起こす準備
* 行動を紙に書くことで意思を固め、行動のステップリストをつくる。
* 小さなステップを重ねることで安心感を得る。
* まず「はい」と言ってから、どうするか方法を考える。
* 「今日何かひとつは新しいやり方をしよう」と自分に言い聞かせ、それを実行する。
* あなたの行動があなた自身だけではなく、他の人にどう役に立つかを考える。
* 職場の現在の問題を調べ、それらを解決する方法を考える
2)行動の障害を乗り越える。
* 時としてばかげているこの世界にユーモアを見出す。
* 拒絶されても意欲を失わない・・・もう一度立ち上がって挑戦する。
* もし失敗したとしても、何もしないより悪い状態になることはないということを理解する。
* ストレスに対応する方法を学ぶ・・・心身をリラックスさせる。
* 小さな成功を祝う。
* 信頼を構築するエクササイズを実践する・・・たとえば賛辞を率直に受け入れる。
* 行動を遅らせる言い訳探しをやめる。
* 支援をしてくれる友人とのロールプレイングで、望ましい行動をまず練習する。
3)行動を起こすⅠ:キャリアの悩みをあらゆる種類の人に相談する。
* ネットワークをつくり、さまざまな人と交流し、関係を築く。
* どんな会議や行事でも、三人の新しい人に話しかけることを目標にする。
* 仕事に情熱的な人を見つけ、その人の仕事についていろいろと質問してみる。
* キャリアに関する悩みを友人に話す。
* いろいろ人にキャリアに関する悩みを話す。
* 普段は怖気ついて避けてしまう人と話してみる。
* 本のサイン会などの会場で、有名な人と話しをする。
4)行動を起こすⅡ:学び続ける。
* 興味を持ったことを調べる。
* 図書館で本をチェックする。
* 有名人に彼らの仕事について興味をそそるような質問をメーする。
* 個人の能力を高める講座を受講する・・・たとえば自己開発セミナー・コミュニティカレッジの講座。
* インターネットを使って、興味のあるテーマについての新しい情報を得る。
5)行動を起こすⅢ:新しいことにトライする。
* いつもと違う道順で家に帰る。
* 新しい趣味やスポーツを試してみる。
* あなたの興味をそそる組織でボランティア活動をする。
* パーティーで、たとえば「もし宝くじが当たったら、あなたはどうしますか?」などと難しい質問を投げかける。
* 似たような興味を持つ人の集まるオンラインのチャットグループをつくる。
* ギターを買う、ピアノを借りる、あるいは何か別の楽器を学ぶ。
6)行動を起こすⅣ:プロジェクトに参加する。
* クラブや協会、グループに参加する。
* イベントを手伝う。
* 何か特定の問題を解決するためのクリエイティブな解決案をまとめる。
* 興味ある分野で小さなステップを積み重ねて試してみる。
* 自分のプロモーションのためにクリエイティブな映像やパンフレットをつくる。
* リスクの低いビジネスを始める・・・たとえば、犬の散歩代行。
* トレーニングやレクチャーをしたり、知識を共有したりする。
7)行動を起こすⅤ:キャリアの幸運をつくりだす。
* 一度に一歩ずつ進む。
* 未来は今ここから始まるということを理解する。
* タイミングのよいチャンスを利用する。
* 常にベストを尽くして仕事をする・・・それは必ず後で返ってくる。
* 自分が望むものを伝える。
* 絶望的なときは、あなたが過去に助けた人のことを思い出す。
* 自己不信にチャレンジを邪魔させない。
* 拒絶されてもやり通す。
* 予期せぬ出来事をつくりだすために、他の実例も考慮する。
多くの人は、チャンスがドアをノックしてやって来るのを待っていますが、ただ待っているだけでは何も起こりません。自分からドアをノックすると、たくさんのチャンスが見つかることに驚くことでしょう。新しい事をする前に、その事に必要なスキルを学んでいる必要はありません。
8、総括
- プランド・ハップンスタンスとは、「偶然の出来事」をポジティブなキャリア形成につなげるための積極的な行動理論である。
- プランド・ハップンスタンスが提唱された当時のアメリカと現代日本の「不安定な状況」が似ていることから、注目されている。
- プランド・ハップンスタンスを効果的に実践するキーワードは「好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心」の5つである。
- 目標を具体的に決めて綿密に逆算するのではなく、漠然とした方向性を保ちつつ、開かれた心をもって偶然の出来事や出会いに接することで、ポジティブなキャリア形成に発展させることができる。
プランド・ハップンスタンスで重要なのは、偶然の出来事や出会いをキャリアアップにつながる機会と捉えること。計画通りのキャリアステップでなかったとしても、まずは挑戦してみようというスタンスが次の扉を開くことがあります。偶然の機会を積極的に増やすよう行動することで、キャリアが広がっていく可能性が高まることをプランド・ハップンスタンスは示しています。
9、あとがき
1)この計画的偶発性から学んでほしかったこと
*将来何になるか、決める必要はない。
その時々で目標をつくってもよいが、目標はあなたの成長や学習、環境の変化に伴って常に変化する可能性があるものです。常に心をオープンにしておきましょう。
*想定外の出来事があなたのキャリアに影響を及ぼすことはさせられない。
想定外の出来事がおこったときはいつでもそれを利用できるように常に注意を怠らない。
*現実は、あなたが考える以上の選択肢を提供しているかもしれない。
夢を追求するときは、夢をみつつ、しっかり目を開けておくということを忘れない。
*いろいろな活動に参加して、好きなこと・嫌いなことを発見する。
どんな活動にも積極的に取り組んで、ベストを尽くす。
*間違いを犯し、失敗を経験しよう。
間違いや失敗は重要な学びの経験となり、それが予想以上に良い結果に結びつくこともあります。
*想定外の幸運な出来事をつくりだそう。
人の手伝いをしたり、組織に所属したり、講座を受講したり、友達や見知らぬ人と話しをしてみたり、ネットサーフィンをしてみたり、本や雑誌を読んだり・・・つまりは、積極的に人生を送ることで、想定外の幸運な出来事をつくりだすことができます。
*どんな経験も学びの経験です。
新しい仕事は常に新たな学びの経験です。その仕事に就く前に、仕事のやり方を知っている必要はありません。
*内面的な障害を克服するために、新しい考えや経験にオープンであり続ける。
人生を豊かで満足感のあるものにする考え方や行動を取り入れましょう。ブッカー・T・ワシントンの言葉を借りれば、「成功とは、たどり着いた地位よりも、むしろ成功を目指して克服してきた困難で測るべきだ」
2)“いつも学び、いつも挑戦し、いつも好奇心を持つ”
2002年に89歳でこの世を去ったジョン・ガードナーは「現世の聖人」と呼ばれています。スタンフォード大学の学長ジョーン・ヘネシーは「ジョン・ガードナーは社会にポジティブな影響をもたらす個の力の模範であつ」と評しました。ガードナーはリンドン・ジョンソン大統領のもとで、数々の偉業を達成しました。自分の人生や、自分が世の中に与えた影響について考えながら、この世を去る前の年に自分自身の人生を振り返りながら書いた文章を読んでみてください。
『私のキャリアは一貫性はあったけれども、もつれた毛玉のようだった。自分はどこに向かっているか理解していただろうか? ・・・ぜんぜん!
私は理論的にキャリアを計算していただろうか?・・・ぜんぜん! 全体構想などなかった。
私は、生涯を通じて元気でへまをやり、成功し、頭から転び、起き上がってはまた前に突進して、いくつかのシンプルな価値観にこだわり、誰かが言っていたように“いつも学び、いつも挑戦苦し、いつも好奇心を持つ”というよい信念を持って生きようとしてきたカルフォルニアの少年だった。』
3)人生に幸運をつくりだす。
世の中に貢献するために、政治的に高い地位に就いたりたり、ビジネスで成功したり、世間に広く認められる必要はありません。あなたがどこにいても、どんな仕事をしていても、誰と出会っても、あなたには自分自身がどんな人間かを世の中に表現するチャンスがあります。あなたの優しさと励ましで、人の役に立ち、意義ある仕事ができます。ジョン・ガードナーがそうであったように、あなたのキャリアが「もつれた毛糸の玉」のようであっても、それでいいのです。常に学び、挑戦し、好奇心を持ち続けてください。
【参照】1、
プランド・ハップンスタンスのケーススタディ
プランド・ハップンスタンス理論の提唱者であるクランボルツ教授自身のケースです。クランボルツ教授が心理学の教授になったのは、まったくの偶然だったといいます。大学時代、テニスに明け暮れていた彼は、進路を決めかねてテニス部の顧問をしていた教授に相談します。この教授が心理学者だったことがきっかけで、彼は心理学を専攻することに決めます。つまり、現在のクランボルツ教授があるのは、この偶然の出会いが始まりだったわけです。
振り返ってみると、人生に大きな影響を与えた偶然の出会いがあったという人は多いでしょう。しかし同時に、気づかずにやり過ごしてしまっている出会いや機会もあるといえます。例えば、膨大な情報の中でも、興味関心がある分野の情報には自然に目が留まります。同じように、普段からさまざまな分野に視野を広げていれば、偶然の出来事をキャッチする機会を増やすことができるでしょう。
偶然を好機につなげるには、未知の領域に臆せず、好奇心を持って向き合う姿勢が必要であることを示す事例です。
【参照】2、
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(労働政策研究・研修機構)
日本企業におけるプランド・ハップンスタンスの有用性
プランド・ハップンスタンスを活用するために、日本企業では、社員自身がキャリアデザインを描き、会社はそれをサポートするというスタンスをとっているところが増えています。しかし実際には、職務やポジションを決めるのは会社側であり、社員が望む通りに進むわけではありません。
変化に対応するべく組織変革を行う企業も多い中、キャリア・アンカーに重点を置いた人材育成や配置では、組織ニーズへの対応が難しいという現状があります。こうしたビジネス環境においては、偶発性を活かすプランド・ハップンスタンスの考え方は有効に働くと考えられます。
例えば、本人が希望していない部署に配属した場合、モチベーションを維持するのは困難です。しかし、その時点では不本意でも、キャリア形成に役立つという説明ができれば納得感を醸成することができるでしょう。
社員の立場から見た場合は、自分の価値観や欲求を満たすキャリア設計と、組織ニーズに対応しなければならないという2軸の中で困難にぶつかります。プランド・ハップンスタンスの考え方や行動を取り入れれば、新たなキャリアを拓くチャンスが生まれるというメリットを享受できます。
つまり、企業にとっても社員にとっても、適性によるキャリア形成と偶発性を活かすキャリア展開の双方を必要に応じて使い分けていくことが重要になってくると考えられます。
企業がプランド・ハップンスタンスを取り入れる上で重要なのは、社員の意識改革です。キャリアの方向性を定めるのは重要ですが、描いたキャリアステップと現実とのギャップにとらわれないことが大切です。まずは挑戦してみるというオープンマインドが、キャリアアップの機会を創出することを理解してもらうようにする必要があります。
プランド・ハップンスタンスは、変化の激しいビジネス環境でのキャリア形成を、ポジティブなものへと転換させるキャリア論です。組織の活性化や社員の能力・モチベーション向上に活かしてください。
【参考】3
「キャリアアドバイザー」を活用することで、組織の活性化と個人のキャリア自律の統合を図る(慶應義塾大学名誉教授 花田光世氏)
人事部長が担うキャリア支援(慶應義塾大学名誉教授 花田光世氏)
【参考】4
計画された偶発性理論 / 日本の人事部
なぜ今、日本でプランド・ハップンスタンスが注目されているのか?
企業が安定して成長していた高度成長期には、個人のキャリアにおいても十分に先を見通すことができたため、綿密にキャリアプランを設計してそれに合わせて経験や知識、スキルを身に付けていくというアプローチが有効でした。しかし、現在の日本ではビジネス環境の変化も激しく、やりたい仕事ができない・見つからないだけでなく、現実には「やりたくない仕事」や「得意ではない仕事」がほとんどであると言っても過言ではありません。
その結果、個人としてキャリアアップが思うように進まずに行き詰ってしまうビジネスパーソンが多いのはもちろん、企業としても効果的な人材育成・社員教育ができずに試行錯誤を繰り返す状態に陥っているため、プランド・ハップンスタンス理論に注目が集まっていると考えられます。